サービスの源は「心配性」!?

ペニーレーン

(取材:にしもっちゃん)

 

 「ペニーレーン」?・・・喫茶店かレストランの店名と思われるが、実は理容店。つまり床屋だ。
 知る人ぞ知るビートルズの名曲「ペニーレーン」。彼らの生まれ故郷の街「ペニーレーン」の思い出を歌にしたのだ。
 歌に登場するのは、お客さんと出会ったきっかけにとった写真を自慢げに並べる床屋さん。
 街の床屋の風景を、懐かしく愛情深く歌った名曲だ。
ビートルズファンの店主は、開業の時、ためらうことなく、この名曲の名を店名にした。

 

流れにまかせて

 

 和田の理容店「ペニーレーン」は、名曲さながらの気さくさとおしゃれ感が漂う街の床屋さんだ。
 和歌山県の実家も理容店という店主、辻本純一郎さん。高校を卒業したときに、「他に思いつかなくて・・」と専門学校を経て、理容師の道へ進んだ。新人時代「理容師には向いていない。見込みがない!」と何度もいわれた。理容師の仕事が面白くなったのは、ごく最近だとか。
 「チェーン店の中で、業務として強制されて動いているうちは正直面白くなかったのかも知れない」。
 3店目のオーナーに見込まれ、今のお店を独立させてもらった時も、「独立・・・こわいです」と及び腰。和田商店街に理容店「ペニーレーン」を開店して16年、「流れにまかせて」やってきた。

思わずこちらがほっとする・・やさしさと気軽さを感じさせてくれる、辻本さん。


 

店を育てる「心配性」と「おおらかさ」

 

デザインのキュートさで、思わず笑顔になってしまう黒板スタンド!毎日変わるメッセージに、思わず足を止めて見入ってしまいます。

「フレンドリー」な風車が回っていますよ。

 独立して自らがオーナーとなると、責任は重い。
 植物を手間隙かけて育て上げるように、店も絶えず何か新しい手を入れている。
 「心配性だから、何かをやっていないと安心できないんですよ」と謙虚な辻本さん。美容院のメンズカットのトレンドや技術を学ぶためにセミナーや研修を欠かさない。Facebookやブログでお店のPRもこまめに行っている。店頭にはかわいい黒板が並んで、お店からのメッセージがあたたかい。
 「新しい方の敷居を下げたいんです」と、入り口にはかわいらしい風車(確かに、フレンドリー!)が回っている。
 その一方で、スタッフへの姿勢は「おおらか」だ。


 「自分で気づいて自発的に動くからこそ、面白い」。理容店経営の面白さに気づいた辻本さんは、スタッフを信頼し、強制せず、それぞれが自ら動き出すことにまかせている。
 「ペニーレーンのスタッフの方はね、何件も先のお店の前までお掃除しているのよ。本当に頭がさがるわ」という商店街の女将さんの声を聞いた。
 それもスタッフ自らが考え行動していること。自ら動き工夫を重ねる面白さが、オーナーからスタッフへ広がって、生きた「ペニーレーン」を育て上げていく。

 

4倍の価値を提供する


 1000円でカットができる安い床屋もある。
 「うちは4倍のお値段をいただく。それなりの価値をお客さまにどう提供していくか?」をいつも心がけているという。
 お客さまがペニーレーンに求めるものも様々。仕事で疲れた殿方は、「そっと静かにくつろぎたい」。小さな子どもを持つ親は、「子どもたちも気軽に連れて行けるお店であってほしい」。話しかけるのが好きなスタッフも、お客さまの様子を伺い「求めるもの」を察知して声をかける。

待合スペースには、コミックにおもちゃと子どもたちへの気遣いがさりげない。


 一人ひとりに合わせたサービスのきめの細かさや、一人ひとりの好みを覚えていくれている居心地の良さ――。確かな技術とともに、さりげなく心を寄せてくれるお店の姿勢が何よりうれしい。
 和田商店街の「ペニーレーン」は、髪だけでなく心までも満足させてくれる理容店だ。

 

 

普段なじみの薄い理容店。「男の世界」と思いきや、女性にも気になるフェイシャルマッサージなどなど気になる癒しのサービスも満載。私も「4倍の価値」を体験すべく、お客さんとしてお店に行ってみたいです。
「流れに任せる」「スタッフの力を信じる」。謙虚な姿勢の裏に流れる経営者の器の大きさにしびれました。

2012.11.9(取材:にしもっちゃん)