名湯『さくら湯』でプチ贅沢を

さくら湯

(取材:スライス)

 食料品店、川上屋さんの脇の道を入ったところに、午後3時ごろちょっとした人だかりができる。一番風呂を楽しみにわらわらと人々が集まってくるのだ。


 ここ「さくら湯」は昭和27年4月に創業。桜が満開だったことにちなんで名づけられ、これまで3代、女性の手で守り継がれている。


 

女性の手で守り継がれる銭湯

 

 懐かしさの残る館内は、掃除の手がいきわたり、気持ちよく入ってもらうためのこだわりが感じられる。客同士も互いに譲り合って、みんなが気持ちよく使えるよう、さりげない気配りがされるのも女性ならでは。

 

 「せっかくお風呂に来たんだもの、気分よくなってもらいたいじゃない」と、2代目の女将の岡田寿美子(すみこ)さん。


 

体をいやし、心をいやす銭湯の新しい価値づくり

 最近では、脱衣所のスペースで、エアロビや手ぬぐい体操などの企画が人気を呼んでいる。また週に1度、ゆずやラベンダーといった温泉気分が味わえるお湯は、3代目の若女将のアイデアで、客からの評判もとてもいい。


 一人暮らし人にも、コミュニケーションの場を提供しているさくら湯。銭湯独特のにおいがする空間で、賑やかな話し声が絶えない。こうした他愛もないシーンのなかでも、女将たちは、客に変わりがないか、目を配っている。


 

「気軽なプチ贅沢」で、若い世代も銭湯を楽しもう!

 

 利用者は年配の方ばかりではない。午前零時の閉店間際には、勤め帰りの若い客が駆け込み、一日の疲れを流していく。週末には、友達同士で連れ合ってさくら湯を訪れる客もいる。サウナもあり、ちょっとしたスパ気分が味わえるからだ。


 最も縁遠そうな小さい子連れ客にも、実は嬉しいサービスがある。親子に限り、大人1名の料金で子ども2名(小学生まで)は無料。2児の母である私も思わず食いついてしまった。17時から21時の時間帯は比較的空いているそうで、これなら子連れでも安心、気軽に利用できそうだ。

 今や各家庭に風呂があり、銭湯とも縁遠くなってしまった。しかし和田商店街には、昔からの老舗が今も健在、たくさんの人に親しまれている。


 「温泉」に行くともなれば、ちょっとした計画と労力を要するが、その点「銭湯」ならば話は早い。「子どもたちを洗って湯船につかる」――日々の流れ作業にも、ちょっとした彩が添えられる。

 

 子どもと一緒に足を伸ばしてゆっくり体の芯まで温められる「気軽なプチ贅沢」。試してみる価値がありそうだ。

 実は、子どものころにときどき行っていたさくら湯。ダンスのレッスンの後で、仲間と一緒に大きなお風呂。風呂上りの牛乳は、いい思い出です。

 

 今回の取材で、女将の寿美子さんのさくら湯への思いとホスピタリティに感動。時間を工夫して今度は子連れでプチ贅沢☆をもくろんでいます。

(2012.3.5 スライス取材)