“品質吟味・親切・勉強”の店

斎藤米店

(取材:あきちゃん)

いつも明るい店主の洋一さんと妻の静恵さん。お二人の息もぴったりです。

 「いつもおいしいお米の御用は “品質吟味・親切・勉強” 米穀(株)斎藤商店」――取材の始めに、米屋の名刺を手渡された。その名刺にはこのような言葉が書かれていた。


 創業者である父親が米屋を営む中で大切にしていた言葉だという。斎藤米店は、文字通り米屋としてのこだわり、お客さんへの心遣いを大切にする温かいお米屋さんだった。


米屋への信頼-洋一さんの米選び

 帝釈天通りから鍋屋横丁に向けてくねくねと伸びる道を歩いていくと「斎藤米店」と書かれた水色の看板が見えてくる。店内には、数種類のお米、タバコ、お煎餅やジュースが並び、その一つ一つに、丁寧な字で手書きされた値札が付いているのが目に留まる。

 

 「同じ産地でも、生産者によってお米の味は変わるんですよ」――腰下にギュッと閉めた前掛けがトレードマークの洋一さんが、穏やかな笑顔で話してくれた。 同じ産地でも、田んぼの「日当たり」「水源の場所」によって、米の味わいが微妙に変わってくるのだという。

洋一さんの手で精米されたお米。米本来の美味しさを味わえます。


 そのため、洋一さんは問屋から米を仕入れる前に必ず自分で米を炊いて、その味を確かめている。


 「おいしい米かどうかは、冷めた時に一番良く分かるんです。おいしい米は冷めてもモッチリしていて舌触りが良いんですよ」
 これまであらゆる品種、産地の米を味わってきた。そのため、微妙な味の違いが長年の勘で分かる。自分の舌で確かめ、自分で納得した米を仕入れているからこそ、お客さんには自信を持って商品をお勧めできるという。
 米屋への信頼――これが、スーパーで米を買う時との大きな違いだと静恵さんは話す。今は、スーパーでも手軽に米を買うことができる。しかし、斎藤米店に来れば「洋一さんが見極めた米」を手に入れることができる。「あの店主さんが仕入れているお米だから安心しておいしいものが買える」――そう思って、お客さんは斎藤米店を訪れるのだ。

お客さんを思う一歩先の心遣い

 

 斎藤米店で大切にしているのは、「お客さんへの心遣い」だ。


 「この前、お客さんに頼まれてお米と一緒にトイレットペーパー2箱を買ってお届けしたのよ。独り暮らしのお年寄りは、買い物をするのが大変だからね」と、笑顔で話す静恵さん。「そんなことまでしてくれるの!?」と、驚かされた。
 重たい米を家まで届けてもらえるだけでも十分にありがたい。しかし、斎藤米店ではお客さんのことを思い、もう一歩先の心遣いをしてくれる。そんなお客さんの立場に立った労を惜しまない仕事ぶりは、先代の父親が遺した「親切」の言葉を大切にし続けている斎藤米店ならではのもの。店主とお客さんという関係を越えて、人と人とのつながりを大切にするご夫妻の温かさが感じられた。

若い世代と米屋の付き合い方

季節に応じて、その時一番おいしいお米が並びます。

 「もっと若い人にも気軽に斎藤米店をのぞいて欲しい」と、静恵さんは話す。


 若い人は、配達してもらうのは「わざわざ申し訳ない」と遠慮してしまう人が多い。しかし、仕事をしていて忙しい人、妊婦さん、子供連れのお母さん。重たい米は買って持ち帰るのは大変。そんな時、気軽に斎藤米店に立ち寄って欲しい。

 そして何よりも「米選びのコツ」「米のおいしい炊き方」「米のおいしい保存方法」・・・長年の米屋の経験と生活の知恵をご夫婦は持ち合わせている。そんな経験や知恵を、買い物をする中で是非とも盗みたい。


 また、ご夫婦自身も常に米について「勉強」することを大切にしている。新しい品種、新しく仕入れた米の炊き方・・・自分達で得た知識をお客さんにしっかりと伝えていく。これもまた先代の父親から受け継いだ志だ。

 

 斎藤米店はいつも人の出入りが耐えない。近所の大学生からお年寄りまで、あらゆる人が店を訪ねては、世間話や人生相談をして帰る。ご夫婦は、「ここは“よろず相談所”だね」と微笑む。
 いつも明るく笑顔で迎えてくれる斎藤さんご夫妻。その笑顔に会いに、今日もお客さんは斎藤米店へ足を運ぶ。

昔の米屋のお話や精米の作業手順なども丁寧に教えて頂き、なんだか社会科見学に行った気分!とっても楽しい取材でした。「何でも聞いてね!」と、快く取材を受けて下さった斎藤ご夫妻。お二人の温かい人柄やお米への思いにふれ、心がほっこりしました。「気軽に立ち寄ってほしい」との思いから、お菓子や飲み物なども置いてありますよ。是非、一度足を運んでみてください!

2013.9.3 (取材:あきちゃん)